ここ3年ほど、山に登るのが面白くって特に夏になると様々な山に挑戦しています。
昨年はケープ・ライトのメンバー3人で富士山に登ったりもしてきました。
今年は単独で北アルプスの常念岳という、なかなか格好良い山に登りました。
夜に長野県の松本まで車で行き、朝から川沿いの緑に囲まれた登山道をゆっくりと登っていきます。
えっちらおっちら。
ひたすらの登りは結構キツく、途中川沿いの涼しい場所で休憩を取ったり、湧き水でのどを潤して一歩一歩進んでいきます。
(ちなみに湧き水は無茶苦茶冷たく美味しかった)
下山途中の人とすれ違うこともあります。
「こんにちはー!」って挨拶したり、「この先もう少しなので頑張ってくださいね!」なんて励ましてもらったり、その場限りの出会いだけど「みんな山が好きなんだなあ」と思うと親近感が湧いてきます。
心の中で、
「1200メートルの登りなんて六甲山に毛が生えた程度やろ!」
「いやいや六甲山と北アルプスを一緒にしたらあかんやろ。荷物だってむっちゃ重たいし、傾斜もえげつないし・・」
そんな、いろいろなやり取りをひとりで繰り返します。
そしてようやく。景色の良い稜線へ。
ここまで木々に囲まれた登山道を進んでいたので、一気に視界が開けた瞬間は最高にテンションが上がる!
その場にいた登山者のむっちゃデカいリュックを背負ったおっちゃんと
「やりましたね!」「この眺めすごいですね!」「お天気も最高ですね!!」
なんて、まるでハグをする勢いで話し込んでしまいました。
この日はここにある山小屋で宿泊。
ちなみにさっき喜びを分かち合ったおっちゃんはテントや調理機器まで持って来ていて、この稜線上でテント泊でした。
山小屋はスタッフの方も登山者も「山が好き!」というところが共通していて良い感じ。
(そりゃ好きでなければこんなにしんどい思いをしてこの場所にくるはずはないけれど)
日没を見ながら同室になったおっちゃんとビールを飲んで話をしたり、星空の写真を撮ったりしながら標高2400メートルの夜を満喫しました。
そして翌日は日の出前に出発。
この旅の最大の目的地、「常念岳」の山頂を目指します。
この標高になると自分の背丈を越える木はなく、岩ばかりの道を進みます。
進む先にはどっしりと構える常念岳、左側に安曇野の街は見えず代わりに雲海が広がっています。
そして朝焼けでオレンジに染まった空、右側には槍ヶ岳や穂高連峰。
信じられないような世界を進みます。
息が上がって何度も立ち止まり、目に飛び込む景色に励まされる・・そんなことを繰り返し、すっかり日が昇り切った6時28分、ようやく山頂へ。
さすが山頂だけあって360度視界が開けます。
先ほど見えていた安曇野の街(の上に広がる雲海)や槍ヶ岳はもちろん、遠くには富士山まで見渡せます。
すごい世界に来てしまった。しかも山頂にいるのはぼくひとり。いくらでもこの景色を眺めていられる・・・・
どれほどこの場所にいたかは定かではないけれど、先に進むことにします。
先ほどの登山道とは反対側、この先に続く稜線を歩きます。目指すのは蝶が岳、そこから大きく下って登山口に戻る10.6キロの行程がこの先に待っています。
道は大きな石ばかりの下り坂、そしてそれが終わるとまた登り。
体力的にはしんどいけれど、素晴らしい景色が続くのでいつまでも歩いていられる。
山登りって全体の95パーセントは無茶苦茶辛く、登りながら「なんでこんなところに来てしまったんやろう?」って毎回思います。延々と続く下り坂も足にダメージが来てしんどいし・・・
でも残り5パーセントの充実感はものすごい。特に山頂から少し降ってから山頂を振り返えった瞬間、幸せいっぱいになります。
どっしりとした山の姿、そこから続く登山道・・・「この山に登りこの道を歩いてここまで来たんやな」と実感します。
ひとりで山登りをすることは遭難リスクを高めるなどデメリットもありますが、自分のペースで歩けることや、日常ではゆっくりと考えることができないことを歩きながら考えることができるのことがメリットだと思います。
今回の山登りでは2日目は10時間歩きました。歩きながら仕事のこと、家族のこと、将来のこと・・色々と想いが巡ります。
山小屋で同室になった男性が
「山にいて人を想う、街にいて山を想う」って言葉があってね・・・と話してくださいました。
街にいる日常では次に登りたい山のことなんかをずっと思い描いているんだけど、いざ山に入ると自分の周りにいる人々のこと、日々のことと向き合うようになるんだな、なんて、その言葉がとても良く理解できます。
今回の山登りは2日間で15時間歩き無事に登山口に戻りました。ここから車で関西へ帰り日常に戻ります。
秋の撮影シーズンが始まる直前にこの非日常の機会が持てたことは有難いこと、非日常を経験し、感性も研ぎ澄まされました。さ、これから年末まで全力で仕事していきます!!
そして次に登る山のことを想います。
河田洋祐