なぜケープ・ライトはアルバム作りにこだわるのか?
ぼくたちの結婚式を撮るという仕事はフォトグラファーの中でも特殊かも知れません。
例えば他のジャンル、コマーシャルや建築、料理・・そういった撮影ならデータをお客さま(依頼主)に渡せばそれで仕事は終了します。
そこからデザイナーさんや編集者の手によって、より見やすいように写真は加工されて行きます。
結婚式の撮影はそうではありません。
フォトグラファー自らが、その後手に取って見やすいようにフォトアルバムという形にしてお客さまにお届けしています。
アルバムを作るという作業は写真の見栄えをさらにイキイキしたものに変えられる魅力ある作業ですが、その分時間やコスト、エネルギーだって使います。
正直な話、デジタルデータのままお渡しするほうがぐっと手間が省けるし、撮影に集中できるので有難いよな、と思うこともしばしばあります。(実際結婚式の撮影でもフォトアルバムを作らず、データでお届けする会社さんも増えています。その方が安くもできるので予算を低く抑えたいお客さまにも選んでいただきやすくなります)
ただ、データだけを渡されたお客さまはその写真をその後どうするのか・・
それが心配です。
後々のことを考えていくつもバックアップを取ったり、ネットからフォトアルバムを注文したりプリントするならまだ良いかもしれません。
でも、データを受け取ってみんなでパソコンやテレビに写して鑑賞して盛り上がっても、そのままにしていたら・・・
デジタルデータは形のないものです。なにかの拍子にその媒体が破損すれば、結婚式の記録は一切ゼロになってしまいます。
それは人生の大切なひとつのピースが欠落してしまうようなもの。あまに悲しい出来事です。
ぼくが19歳の時阪神淡路大震災で家が全壊しました。
その時もっとも先にみんなが探したのは家族の思い出が詰まったアルバムです。
今でも 90歳になる祖母は僕達が実家に帰ると嬉しそうに昔のアルバムを持ち出してその頃の話をしてくれます。中にはぼくが生まれるはるか前のものだってあります。
東日本大震災の後も、津波で汚れたアルバムを洗浄するというボランティアがあったほど、家族にとって写真のアルバムというのは大切なものです。
これがデジタルデータでしか残っていないと、被災してしまった写真はもう復旧させるのは難しいことでしょうし、いつでも手軽にどんな年代の人もみんなで見るというのも叶いません。
もちろんこれからデジタルデータの保存技術や鑑賞方法ははどんどん進化していくでしょうが、やはり 2017年の今はそれが現実です。
ぼくたちは、結婚式の写真はその家族にとって、一生宝物になるような大切なものだと考えています。何十年、何百年たっても笑顔で見返してもらえるものを届けなければならないと考えています。
ぼくたちが新しいアルバムを取り入れる際最も気にするのは、「このアルバムが今の状態で何年保存できるか」ということ
そのために感材を作っているメーカーを厳選したり、アルバムの素材には酸性でもアルカリ性でもない中性の素材を選んだりと細部まで気にしながら制作しています。
そして (直射日光や湿気を避けて保存すれば) プリントタイプの「クラシックアルバム」なら200年、印刷タイプの「フォトブック」なら50年劣化はしないで保存できると自信をもってお伝えをしています。
表紙は革を使い、時間とともに成熟していく(家族のような)変化を楽しんでいただけるようにしています。
いつになっても見返したくなるフォトアルバムを届けることが、ウェディングフォトグラファーの役割です。
だから素材にこだわり、編集にこだわり、価値のあるアルバムを作り続けています。
河田洋祐
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20170203
なぜフォトアルバムにこだわるのか?
Category : 思い入れ